2023.06.28
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技法 / 縁錆(FUCHI_SABI)のご紹介

 

 縁錆とは、伝統的な装飾技法です。器の縁側に鉄分が含まれる釉薬で加飾するものです。縁錆をすることで、うつわ全体が締まって見え、洗練された上品な雰囲気を引き出してくれます。名称について、縁錆のほか、口サビ、または口紅とも言います。

 

 由来について諸説は様々ですが、時代を遡ると、九谷焼における17世紀の古九谷以前、中国の明朝景徳鎮にはもうすでに口紅(注1)という技法がございました。当時の景徳鎮(注2)において、素地と釉薬の収縮率の違いによって生じる口縁部の釉の脱落現象があり、それは虫喰いと呼ばれ、うつわが欠けたようにも見えます。うつわの口縁部分などの脱落が発生しそうな所に上釉を拭き取り、鉄釉を塗って虫喰いを避けます。

 

 歴史において、騎馬民族(のちに清朝となる)満族の侵入による明末期動乱のため、活動休止間近の景徳鎮では、広がる社会不安の中、中国から陶磁器の技術を持った人々が難を逃れ、日本(伊万里を中心)に多く渡ってきました。この技術指導者たちはそのような虫喰いを防ぐためにこの技法を現地の陶工たちに指導したのだと思われます。時代とともに中国伝来の技術は、九谷焼においては消えることなく、一つの装飾技法として今でも活躍しています。

 

 縁錆の色は、弁柄を使っているため、焼成前には赤色となっており、焼成後は茶色(柿色、錆色)になります。ただ、その調合分量によって発色が違います。黒い縁錆もあれば、赤みのない茶色もあります。弊窯は弊窯の窯温度に合わせたオリジナルの割合で長年に調合してきた原材料が生産中止になってしまうことがありました。その際に手に入る原料で調合しなおし、鉄釉に詳しい他産地の業者にも相談しながら半年間の調合実験によって元の色を再現することができました。弊窯の縁錆は赤みのある温かい茶色マット感が特徴で、目利きの鋭いお客様は、その縁錆をみて「これは宮吉さんじゃない?」と仰います。一見シンプルな加飾法ではございますが、問題解決(虫喰いを止める)のために知恵を絞った陶工が歴史に残してくれた技法を受け継ぎ、伝えていくことはとても重要なことだと思っております。ぜひとも皆様に弊窯の縁錆をご覧になっていただきたく思います。

 

注1)口紅:鉄分の原である弁柄は、焼く前の色が赤色のため口紅という。

注2)景徳鎮:中国陶磁器の名産地。宋代の1004年に官窯が始まり、明清時代に栄えた。

       特徴として、宋~元の時代は白磁・青磁が主であった。景徳鎮の白磁は青みを帯びた白磁が有名。

                またその他、染付・赤絵等の技法も加え、中国陶磁器には大きな進化をもたらし、ヨーロッパにも大きな影響を与えた。

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